2016年2月26日金曜日

安倍政権の政治圧力、ニュース解説者たちから報道の場を奪う

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安倍政権の政治圧力、ニュース解説者たちから報道の場を奪う

安倍政権の閣僚、放送法を曲解し放送局を脅迫
本人たちの意思ではないニュース解説者たちの番組からの降板

イギリスのガーディアン誌 2月17日
ジャスティン・マッカリー 

 もしアンドリュー・マー、エミリー・メイトリス、アンドリュー・ニールなどの口うるさいニュース解説者が一斉にテレビのブラウン管から姿を消したら、英国の政治家たちは間違いなく大喜びすることでしょう。
 しかし日本では現実に鋭い質問をすることで知られるニュース解説者が、実際にテレビ界から追いやられる運命に見舞われました。

 古舘伊知郎氏、国谷裕子氏、岸井成格(しげただ)氏の3人は、鋭い質問をすることで知られ、ニュース解説者として高い評価を得てきました。
 目前に迫っている夜間に放送される報道番組からの降板は、単に彼らが職を失うという事だけに留まりません。
 公正な報道を貫こうとするニュース解説者や番組に対し、偏狭で狭量な安倍首相とその協力者である与党議員たちがあからさまな報道規制を行なおうとしているとの批判が高まっています。

 つい先週、高市早苗総務大臣はメディア組織に対し明白なメッセージを送りました。
 「政府機関からの警告にもかかわらず政治問題について繰り返し『公正な報道』を行なわなかった放送局に対しては、その放送免許を取り上げることも辞さないと関係議員に語ったのです。
 日本の放送法の下では、総務大臣には政治的に中立を守らない放送局の放送免許を停止する権限があります。」

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2001年9月「日本女性の会」(日本会議系組織)結成(山谷えり子、西川京子、高市早苗(山谷えり子が顧問の「百人の会」の顧問)らが副会長)。


http://matome.naver.jp/odai/2140963578944305601
出典nsjap.com
高市早苗政調会長と山田一成
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「これは放送局に対する脅迫に他なりません。」
日本民間放送労働組合連合会は声明を発表しました。
「(高市総務大臣の)発言は法律を完全に曲解しており、私たちはこの発言を直ちに撤回するよう要求します。」

 今後日本で公正中立なインタビューとして認められたものと同等の報道が、イギリス国内で価値のある政治報道と認められることはまずなさそうです。
 そのような逆境の中にあって3人のニュース解説者全員が、政権の意向に諾々と従おうとする日本のテレビ各局の他の報道関係者とは異なる道を選択したことについて、議論することを求めました。

 ニュース解説者に対する一連の圧力事件の中心にいるのが、テレビ朝日の夜の人気ニュース番組、報道ステーションの古舘伊知郎氏です。
 昨年春の放送された番組の中で、解説者のひとりで安倍政権への批判を強める古賀茂明氏が、政権閣僚の圧力によって降板させられることになったと主張しました。

 岸井成格氏の場合は、昨年安倍首相率いる自民党が議会で安全保障関連法案を強行採決したことをTBSネットワークの報道番組、ニュース23の中で批判し、安倍政権をチ支える立場の人間たちを怒らせました。

 しかし番組を降板させられる中で最も衝撃的なのは、国営放送NHKのニュース解説番組、クローズアップ現代の国谷裕子氏のケースでしょう。
 彼女の『罪状』は、安倍首相に最も近い立場にいる菅義偉官房長官にインタビューを行った際、安全保障関連法案についてあらかじめ予定していなかった追加質問を行い、菅官房長官を怒らせてしまった事です。

 これらの圧力について渦中のニュース解説者たちはコメントを拒否しています。
 しかしこうした問題の専門家たちはこれら一連の降板劇の前、安倍首相が第三者をシャットアウトして上でテレビ各局の最高経営責任者たちを夕食会に招き、その後それぞそれのキャスターを見舞ったのが今回の降板劇であると語っています。

「番組を降りるというのは、彼ら自身の決断によるものではないのです。」
エセックス大学人権センターの藤田さなえ氏がこう指摘しました。
「しかし彼らの上司が、安倍首相の『お供達』である放送局のトップからの圧力にさらされることになり、番組を追われることになったのです。」

 政権の意に沿わないニュース解説者を降板させるというやり方で、自己検閲姿勢を強める日本のメディア
 政府批判をすればすべて偏向報道だとする安倍政権の見解を受け入れることが、日本の報道なのか?

 「政権の意に沿わないニュース解説者を降板させるというやり方で、日本のメディアが自己検閲姿勢を強めていることを非常に心配しています。彼らは自分たちに権力を監視するという大切な役割について、まるで意に介していないように見受けられます。」

 上智大学の政治学が専門の中野晃一教授は、古舘伊知郎氏、国谷裕子氏、岸井成格(しげただ)氏の3人のニュース解説者としての契約の打ち切りと安倍政権との関係について、直接の因果関係を証明することは不可能だと語りました。

 「しかし安倍首相、そして特に菅官房長官が積極的にテレビ局のトップと歓談する機会を設け、その結果ニュース解説者たちに対する圧力がどんどん強まっていったという事例証拠は数多く存在します。」

 昨年4月、自民党は委員会開催前にテレビ朝日とNHKの番組制作担当者を呼び出し、特にテレビ朝日については公平な政治報道を行なわなかったとして責め立てましたが、多くの専門家がこの事実を問題視しています。
 早稲田大学のメディア学科の花田達朗教授は、こうした事実は『事実上の脅迫』に他ならないとして批判しました。

 権力の濫用に対する公共利益の擁護者としてのジャーナリズムの役割を肝に銘じ、その信念に従って行動しようと決心した瞬間から3人のニュース解説者は攻撃目標とされてしまったのであり、今回3人がほぼ同時に契約を打ち切られることは偶然でも何でもないと、花田教授が指摘しました。
 「3人が3人とも、自ら番組を降りるつもりが無かったことは明らかです。」

 安倍首相が放送局などの編集報道の独立を巡る論議の的になるのは、初めての事ではありません。
 安倍氏は2005年、NHKのスタッフに対し従軍慰安婦問題を扱ったドキュメンタリーの内容を変えるよう要求を行ったことを認めています。

 2014年の後半、安倍首相が抜き打ちで衆議院選挙を行った時も、自民党は東京の各ネットワーク各局に対し、「間違いなく公正、中立、正確な」報道を要求する文書を送付しました。

 安倍首相はさらに、公共放送のNHKの会長に、自らの取り巻きのひとりであり、同じ保守派の籾井勝人氏を据え、その番組編集方針に影響力を振るおうとしているとして批判を集めています。

 会長に就任した籾井氏は、会見の席上中国との間で領有権を巡り紛争が起きている外交問題について発言した際、NHKは今後政府の意向に忠実に沿う形での報道を行うつもりだと語り、取材に訪れた世界各国のメディアを唖然とさせました。

「国際的な報道と国内報道とはおのずと異なります。」
籾井氏は次のように続けました。
「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいきません。」

 安倍政権が2013年に成立させた特定秘密保護法もまた、日本の報道を脅迫するための手段のひとつであり、その成立は日本の国際的評価を一段と低下させることになりました。

 日本は国境なき記者団が作成した世界的な報道の自由ランキングで、2005年には180ヵ国中12位という位置にいましたが、安倍政権下の2015年にはその順位を一気に61位にまで低下させました。

 そして同じ2015年12月、日本の報道の自由に関する調査を行うため国連が特別調査官デイビッド・ケイ氏を日本に派遣すると発表しましたが、日本側は政府関係者が対応できないとして訪問が突然キャンセルされました。
 これは日本政府が報道の自由に関する詳細な調査を拒否したものとして、改めて懸念を引き起こしました。
 ケイ氏は2016年4月、改めて来日するため調整が行なわれています。

 「今まさに行なわれている安部政権と保守タカ派グループによる日本の報道の自由に対する攻撃は、もはや右派、左派といった立場の違いに留まるものではありません。日本の民主主義、自由主義の根幹への破壊行為です。」
 上智大学の中野晃一教授がこうに指摘しました。

 「私は日本の報道の自由、表現の自由を守るため、報道機関が連携しようとしないことに大きな失望を感じています。政府批判は何でもかんでもすなわち偏向報道だとする安倍政権の見解を、各報道機関が黙って受け入れているとしか思えません。
 政府の政策をそのまま受け入れる報道を行うことが、賞賛に値する、中立の立場のジャーナリズムだとされていることは、まさに憂うべき状況だと言わなければなりません。」

〈 完 〉

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