<社説>「共謀罪」提出へ 民主主義崩す「悪法」だ
2016年8月29日 琉球新報
罪名を変えたところで、市民活動を抑え込み、思想・信条の自由を侵す危うさは消えない。「共謀罪」の新設は必要ない。
安倍政権は、国会で3度も廃案を重ねてきた「共謀罪」をつくろうとしている。罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変える組織犯罪処罰法の改正案を、9月の臨時国会に提出する見通しだ。
2020年の東京五輪に向けたテロ対策を前面に押し出す構えだ。
昨年11月のパリ同時多発テロ後、自民党内からテロの不安に便乗し、「共謀罪」創設を求める声が出たが、首相官邸は火消しに走った。
なぜか。国民生活を縛る「悪法」との印象が根強く、今年夏の参院選への悪影響を懸念したからだ。
7月の参院選で大勝した後、政府は「共謀罪」創設に走りだした。国民受けの悪い施策を封印し、選挙後になって推し進める。安倍政権お決まりのやり方である。
「共謀罪」とは何か。具体的な犯罪行為がなくとも、2人以上が話し合い、犯罪の合意があるだけで処罰対象となる。
------共謀罪の事例-------------------------
1932年:司法官赤化事件:
1932年11月12日、東京地方裁判所の判事・尾崎陞が日本共産党員であるとして、治安維持法違反により同地裁の書記4人とともに逮捕された。
翌1933年2月から3月にかけては
長崎地方裁判所の判事と雇員各1人、
札幌地方裁判所の判事1人、
山形地方裁判所鶴岡支部の判事と書記各1人
も相次いで逮捕された。
逮捕された9人の容疑内容はいずれも
「研究会を開いた」
「カンパに応じた」
「連絡を取り合った」
などの行為だったが、
日本共産党の目的遂行のために(準備する)おこなった行為とみなされ、全員が有罪判決を受けた。
(これらの行為は、
政権や公安警察にとって不都合なあらゆる現象・行動を罰する治安維持法の
逮捕要件を満足する
)
これらは、共謀罪の逮捕要件を、満足する。
-----事例おわり-----------------------------
これまで「団体」としていた適用対象が「組織的犯罪集団」に変わった。市民団体や労働組合を標的にした乱用の恐れがあるとの批判をかわしたつもりだろう。一方、謀議だけでなく、犯罪実行の「準備行為」も罪の構成要件に加えた。
犯罪集団や準備行為の定義はあいまいで、捜査当局が組織的犯罪集団か否かを判断する構図は変わらない。恣意(しい)的な判断による立件の恐れがある。謀議や準備行為を巡り、盗聴や密告奨励など監視社会が強まる危険性は拭えない。
治安維持法の下で言論や思想が弾圧された戦前、戦中の反省を踏まえ、日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。
政府は「共謀罪」をテロなどに対処する国連の「国際組織犯罪防止条約」への加入条件とするが、現行刑法でも予備罪や陰謀罪など、未遂以前の段階で処罰する仕組みはある。
特定秘密保護法、集団的自衛権行使に道筋を開く安全保障関連法の成立など、安倍政権は立憲主義を軽んじてきた。名護市辺野古や東村高江では、新基地にあらがう市民を力ずくで排除している。
政権への批判に対し、度を越えた反発を示して威圧する狭量が色濃い。この政権が「共謀罪」を手中にする危うさも考えたい。民主主義を掘り崩す制度は要らない。
1945年
占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。
そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者・共産主義者が釈放される。
1945年10月4日、
マッカーサーから治安維持法の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。
すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした。
しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、
戦前の治安維持法も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。
「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、
「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」
でした。
(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)
同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、
「国民を逮捕するための法律」のようです。
また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。
(憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。
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