今、日本で起きていること
2015年06月29日
玉木雄一郎
衆議院議員(民主党、香川2区選出)
『立憲主義』って一体、何ですか?と地元の中学生数人に聞かれたので、中学生にも分かるように、説明してみたいと思います。
『立憲主義』とは、一言でいうと、国民の自由・権利を守るために、憲法で権力を持つ人の行動をしばることです。
まだ、難しいですかね?
もし憲法が、その時々の総理や官僚によって勝手に解釈、変更できるようになれば、どうなるでしょう?
例えば、権力を持つ人が正しいと考えることだけを認め、違う意見を言う人は逮捕する、そんな世の中だったら絶対嫌ですよね?
でもわずか70年前の日本では、そんな状況がたくさんあったのです。例えば「その政策はまちがっている」そう言っただけで、人は逮捕、投獄されました。
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第1の思想弾圧事件(3.15事件)
1928年3月15日:第一回普選(1928年2月)での無産政党(共産党)の進出に脅威を持った政府は,選挙直後の3月15日,全国いっせいに日本共産党・労農党・労働組合評議会・無産青年同盟の関係者を多数検挙し,さらに労農党以下3団体の解散を命じた。(3.15事件)
(逮捕者の中に学生150名が含まれていた)
★治安維持法違反被疑者の弁護人も逮捕される
3・15事件の弁護人のリーダー格となった布施辰治は、大阪地方裁判所での弁護活動が「弁護士の体面を汚したもの」とされ、弁護士資格を剥奪された。
さらに、1933年(昭和8年)9月13日、布施や上村進などの三・一五事件、四・一六事件の弁護士が逮捕され、前後して他の弁護士も逮捕された。
《日本労農弁護士団事件》1933年9月~11月,日本労農弁護士団に属する左派系弁護士30人が検挙された。
その結果、治安維持法被疑者への弁護は思想的に無縁とされた弁護人しか認められなくなり、1941年の法改正では、司法大臣の指定した官選弁護人しか認められなくなった。
★1928年に、文部省内に学生課(後の1934年の「思想局」の前身)を設置し、組織的に学生の思想を取り締まった。
その業務は:
「一 内外における社会思想の調査研究に関すること」
「二 学生生徒の思想の調査研究に関すること」
「三 学生生徒の思想的運動に関すること」
「四 その他、思想問題に関する調査研究に関すること」
であった。
(1929年3月に国会議員の山本宣治(死後に共産党員に加えられる)が、国会で思想善導(「青少年健全育成」に対応する)について質問した後の3月5日に暗殺された。)
(当ブログのコメント:思想善導は、現代の日本の青少年健全育成に対応する概念です。
また、戦後の日本政府は、(弾圧した国民の復讐を恐れ)、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした。
しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、
戦前の治安維持法も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。)
第3の思想弾圧事件(司法官赤化事件)
1932年:司法官赤化事件:
1932年11月12日、東京地方裁判所の判事・尾崎陞が日本共産党員であるとして、治安維持法違反により同地裁の書記4人とともに逮捕された。
翌1933年2月から3月にかけては
長崎地方裁判所の判事と雇員各1人、
札幌地方裁判所の判事1人、
山形地方裁判所鶴岡支部の判事と書記各1人
も相次いで逮捕された。
第4の思想弾圧事件((長野県と)全国教員赤化事件)
1933年 2月4日:
長野県で教員が思想問題で多数(66校、230名)検挙される(長野県教員赤化事件)。
この事件を契機に、全国各地で同様の弾圧が行なわれ、1933年12月までに岩手県、福島県、香川県、群馬県、茨城県、福岡県、青森県、兵庫県、熊本県、沖縄県で多数の教員が検挙された。
第5の思想弾圧事件(滝川事件)
1933年:滝川事件
1933年3月になり共産党員およびその同調者とされた裁判官・裁判所職員が検挙される「司法官赤化事件」が起こった。
この事件をきっかけに、5月26日、文部省は文官分限令により京都帝国大学法学部の滝川幸辰教授の休職処分を強行した。
滝川の休職処分と同時に、京大法学部は教授31名から副手に至る全教官が辞表を提出して抗議の意思を示した。
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そんなことにならないように、憲法で政治家や公務員の勝手な行動をしばっておこうという考えが『立憲主義』なのです。
今、安倍総理は「世界情勢の変化にあわせて憲法解釈を変えるのがむしろ当然で、それをやらない方が無責任だ」と言っています。
こうした総理の発言はニュースなどでも取り上げられましたが、私は実際にその場で発言を聞いていて、こんなことが起こっていること自体に、背筋が凍る思いでした。
これは、『立憲主義』の考え方から完全に外れています。憲法解釈を自由に時の政権の考えで変える、それは、越えてはいけない一線を越えてしまっているのです。
そして、『立憲主義』の考えを無視してつくられている、この「平和安全法制整備法案」の何が問題なのか説明しましょう。中学生の皆さんにも分かるように、できるだけシンプルに書こうと思います。
まず「国を守るため」と安倍総理は声を大にして言っていますが、他国が日本に攻撃してくれば、自衛隊は今の憲法でも十分戦うことができます。
国会で通そうとしている「平和安全法制整備法案」は、
1.「日本が攻撃されていないのに自衛隊が戦えるようにする」
2.「自衛隊を海外のどこにでも派遣できるようにする」
これらが主な内容です。
厳しい世の中になっているのだから、日本もアメリカなどと一緒に戦わなければならないという理論です。
でも本当にそうでしょうか?
厳しい世の中になっているからこそ、日本と日本人の命を守るために、他国の戦争には軽々しく加担しないことが、本当は大切なのではないでしょうか。
それが、私がかつて外交官として世界を見て回って肌で感じた、日本が取るべき最良の策だと信じています。
誤解して欲しくないのは、それは、何もしないこととは違います。
外交、調停、災害援助、崩れてしまった国を立て直す、病気を撲滅する...武力ではなく、積極的に平和に貢献できる方法はたくさんあります。
特に日本は宗教戦争を経験していない珍しい立場の先進国であるからこそ、欧米諸国にはできないことがあるのです。
日本には、これまで歴代の政権が築きあげてきた平和国家の「信用」という財産があります。それを活用して日本独自の貢献ができるはずです。そして、そういう日本の姿勢が最終的に国民に安全をもたらすのです。
米国の後をついていって戦争に加わって、本当に日本は安全になるのでしょうか?私は、米国の議員とも話をしますが、日本は米国とは違う役目を果たせると意見する議員もいます。
でも、中学生のみなさんには、この話、どちらが正しいのかすぐに判断するのは難しいかもしれません。ただ、これだけは忘れないでください。
「いい戦争というのは絶対にない」ということです。
武器を持って海外に出ていけば、自衛隊の皆さんが死んだり傷ついたりする危険は高まります。そして、何の罪もない他国の市民を悲惨な戦いに巻き込んでしまう危険も高まります。
総理や大臣という偉い人たちから「外国からの危機が迫っている」「戦える準備をするのが当然だ」そんなふうに不安を煽(あお)られれば、その通りだと思うかもしれません。
でも、聞いて下さい。
私は、かつて外務省で働いていました。その時に、中東やアフリカを担当していました。中東和平の支援が私の仕事でした。ヨルダンのアブドラ国王やリビアのカダフィ大佐とも直接会って話をしたこともあります。
また、米国のハーバード大学のケネディスクールに留学したときには、世界中から集まった仲間たちと政治や外交を研究しました。
だからこそ、今の世界の問題点もよく理解しているつもりです。そして平和を維持することの難しさも。
平和はつくらなければいけません。
でも、この法案では、平和はつくれない。
法案名に「平和」とついていますが、逆に、日本と日本人の安全を損なうおそれがあります。
私は、これまで日本が世界から受けてきた平和国家としての信用を守りぬき、それで戦いたいのです。こんなに大切で尊い国の財産はないからです。
子どもを親を配偶者を恋人を、殺された怒りは世代を超えて必ず連鎖します。
他国の戦争についていけば、必ず日本も「敵」になります。敵になればいつか必ず日本でもテロが起こります。これこそ、まさに新しい変化の本質なのです。
もう一度言います。
武力ではなく、人道支援など、苦しんでいる人たちが平和に安全に暮らせる状態にすることに積極的に貢献することが、日本国民の安全を守ることにつながるのです。
最後に、『立憲主義』と同じく、中学生の皆さんにもうひとつ知っておいてもらいたいことがあります。
前回の選挙でアベノミクスという経済政策を訴えた自民党は圧勝しました。その結果、今、どんな法案でも数の力で強行採決できる状態にあります。民主主義は多数決ですから、安保法案もこのままでは通ってしまいます。

厚生労働省の毎月勤労統計調査の統計表一覧、季節調整済指数及び増減率11(実質賃金 季節調整済指数及び増減率、現金給与総額(5人以上))から(1月-3月)データを抽出
総務省統計局家計消費指数 結果表(平成22年基準)の、総世帯の家計消費指数のデータから、実質家計消費指数を抽出
2015年3月6日:ふつうは業績回復が先行し、その後に人件費は増加していく。ところが、現状ではそうなっていない。
2015年6月8日:安倍政権はこれでも派遣法を改悪するのか?派遣労働で貧困にあえぐ”普通の女性たち”

日本と中国の名目GDP(ドル換算)

もし皆さんのまわりに、よく分からないと言っている大人がいれば、どうか『立憲主義』がなぜ大切なのか、説明してあげてください。
皆さんの将来に大きくかかわる問題です。知らなかったでは、すまされない。あなたたちの問題なのです。
私も、がんばります。
(たまき雄一郎ブログより転載)
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