2015年10月20日火曜日

論プラス:生活困窮と児童虐待 高リスク家族への支援を=論説委員・野沢和弘

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論プラス:生活困窮と児童虐待 高リスク家族への支援を=論説委員・野沢和弘
毎日新聞 2015年06月23日 東京朝刊

 児童虐待の相談件数が最近になって急増している。
経済的困窮や不安定な就労が原因との見方が強い。
特にひとり親家庭の貧困は深刻だ。
通告された虐待相談の対応に追われるだけでなく、家族を社会的孤立から救済し、就労などを通して生活を立て直すことが必要だ。

 オリーブの木の周囲に色とりどりの草花が咲いている。
千葉県君津市にある「はぐくみの杜」は社会福祉法人・生活クラブ風の村が2013年に開設した定員40人の児童養護施設だ。
静かな敷地には一戸建ての家が六つ並び、幼児から高校生までさまざまな年齢の子どもたちが家族のようにして暮らしている。

 児童養護施設は戦争で親を亡くした子どもたちを収容した孤児院が前身だ。
現在は虐待などで親と一緒に暮らせない子どもたちが多くなった。
ささいなことでカッとなり、刃物を突きつける。
箸の使い方を知らず、「犬食い」のようにご飯を食べる。
職員に反抗して暴れる。
心身に虐待の深い傷を負った子の対応に職員も悩んでいる。

 はぐくみの杜はそれぞれの建物ごとに職員が食事を作る。
調理の音がし、鍋のにおいがする家で子どもたちが暮らすことを大事にしている。
「家族で食卓を囲み『いただきます』とご飯を食べるのは、この子たちには普通じゃないんです」と高橋克己施設長は話す。
親からやられたことを自分もやる。
暴力から身を守るためには暴力を使う。
そうやって必死に生きてきた子どもたちなのだ。

 児童虐待防止法が2000年に施行され、虐待に気づいた人に通告義務を課したことから通告件数は一貫して増えてきた。
13年度は7・4万件で、この10年間で2倍以上も増加した。
最近は「経済的困難」と「不安定な就労」が虐待理由の過半数を占める。
貧困や社会的格差が子育て世代に暗い影を落としている。
特に母子家庭の貧困は深刻で、虐待相談の4件に1件は「ひとり親」の家庭に関するものだ。

 2004年の同法改正では「家庭内暴力の目撃」が新たに虐待の定義に加えられ、立ち入り調査の際などに警察に援助要請を求めることが規定された。
2度目の改正(2007年)では子どもの安全確保のための立ち入り調査や保護者の通信・面会の制限を強化し、
立ち入り調査を拒否した場合の罰金が30万円以下から50万円以下に引き上げられた。
2011年の民法改正では虐待する親の親権を停止できることが盛り込まれた。

 相次ぐ法改正によって虐待家庭への介入や親権制限の強化が図られてきたが、
その一方で虐待する親の教育や立ち直り支援、貧困などでリスクの高い家族に対する支援は遅れてきた。
発達の過程で子どもが見せる甘えや反抗に対して、多くの親が戸惑いやいらだちをおぼえるものだ。
生活が苦しく安定した仕事がないため、パートや派遣の仕事を掛け持ちでこなしている親は多い。
疲れ切って子どもの世話をする余裕がなく、生活苦に陥っているうちに不安や不満を子どもにぶつけてしまう。
周囲に相談できる人もいない。
そんな親に対して、親権停止などの厳しい姿勢で臨むだけでは虐待は減らない。

 札幌市にある「麦の子会」は発達に心配のある就学前の子どもたちに専門的な支援を行う社会福祉法人だ。
日曜日の午後に訪ねると、10人の母親が子育ての学習会に参加していた。
「スキル練習(1) おもちゃを片付ける指示に従った。
○○ちゃん、えらいね」。
パワーポイントで先生が子どものほめ方を説明する。
母親たちは互いに親子の役割を演じながら、はにかんで声を掛け合っている。

 子育ての負担を軽くするため、ショートステイ(短期の宿泊)やホームヘルプ(各家庭を訪問しての介助援助)などの家族支援も行っている。
現在の利用者は約470人。
このうち77人が「ひとり親家庭」の子という。
経済的に困窮している人も多く、麦の子会では生活保護の受給手続きの支援や、カウンセリングで孤立する母親の生活の改善に努めている。

 「それでも、働くことがやっぱり大事。
生活に必要なお金を自分で稼ぐだけでなく、社会の中で自分の役割を見つけることが自立の大きな力になります」。
北川聡子総合施設長によると、麦の子会が経営する福祉事業所でシングルマザーの雇用を進めており、利用者77人のうち60人の母親を雇用している。
職住接近で親が近くにいることで子どもが落ち着くようになるという。
「母親が仕事で忙しい時はほかの誰かが子どもを風呂に連れて行ってくれる。
助けられたり、助けたり。
みんなで子どもを育て合うのです」。
何人もの障害のある子を里子として育ててきた北川施設長は笑う。

 虐待や生活困窮の増加に対し、さまざまな法律や制度が作られ、相談窓口が整備されてきた。
今春から全国各地で生活困窮者自立支援事業が始まった。
しかし、相談には乗っても生活苦にあえぐ人々を自立にまで導くことは容易ではない。

 市町村が子ども虐待の相談窓口となり、児童相談所や学校、警察など関係者が集まって情報交換や支援協議を行う「要保護児童対策地域協議会」も設けられたが、
形式的に会議を開くばかりで活動が停滞している協議会が多い。

 どんなに制度を整えても、形式にこだわる「お役所仕事」の体質が隙間(すきま)を生み、
過度な個人情報保護が関係者の連携を阻む壁となっている。
一方で、互いの家庭の中のことをよく知り、風通しをよくすることが、子どもを守る力になることを麦の子会の取り組みは物語る。
生きにくい人々が肩を寄せ合う、昔の長屋のような暮らしが生活困窮の家庭を救っているのである。


(参考データ)

下村博文(文部科学大臣・教育再生担当大臣・衆議院議員・自民党)が、国民の兵役義務や強制労働を匂わせている
 「大学教育の国際化は急務だ。それだけでなく(若者に)半年間、海外青年活動や福祉のボランティア、自衛隊の体験入隊などできたら労役的義務を課して、若者たちに受身ではなく積極的に前向きに生きる姿勢を身につけてもらいたい。
(2012年1月19日)


前原金一(経済同友会副代表・住友生命総合研究所代表取締役)が、国民の兵役義務や強制労働を匂わせている
 「今,労働市場から見ると絶好のチャンスですが,放っておいてもなかなかいい就職はできないと思うのです。

前も提言したのですが,
現業を持っている警察庁とか,
消防庁とか,
防衛省などに頼んで,
1年とか2年のインターンシップをやってもらえば,
就職というのはかなりよくなる。
防衛省は,考えてもいいと言っています。
 前の学生・留学生課長の松尾課長にも申し上げました。
文科省だけで解決しようとしないで,国を挙げて,
厚生労働次官にも申し上げたのですが,百数十万人いる無職の者をいかに就職させるかというのは日本の将来に非常に大きな影響を与えるので,
それをやってほしいとお願いしているのですよ。
貧困解決に「経済的徴兵制」とか言っちゃう人達と経済同友会とかいうカルト集団



 アメリカでは、「徴兵制はいらない。貧困があるから」と言われていて、まさに国家規模の「貧困ビジネス」が戦争になっているわけです。


安倍政権の福祉は【兵隊】貧しい若者を兵隊として「食わせる」国防は最大の福祉と!佐藤正久・自民党参院議員
 
△右翼政権がボリビアとウルグアイを貧困にした


2015年3月6日:ふつうは業績回復が先行し、その後に人件費は増加していく。ところが、現状ではそうなっていない。


2015年6月8日:安倍政権はこれでも派遣法を改悪するのか?派遣労働で貧困にあえぐ”普通の女性たち”
http://www.jil.go.jp/press/documents/20150630.pdf
「母子家庭の原因の離婚の原因は貧困」 

(参考データ)日本の政治の結果の経済
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000026271631
厚生労働省の毎月勤労統計調査の統計表一覧、季節調整済指数及び増減率11(実質賃金 季節調整済指数及び増減率、現金給与総額(5人以上))から(1月-3月)データを抽出


http://www.stat.go.jp/data/gousei/soku10/zuhyou/1s.xls
総務省統計局家計消費指数 結果表(平成22年基準)の、総世帯の家計消費指数のデータから、実質家計消費指数を抽出


http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa14/index.html
「母子家庭の原因の離婚の原因は貧困」 を参照)


2015年3月6日:ふつうは業績回復が先行し、その後に人件費は増加していく。ところが、現状ではそうなっていない。


2015年6月8日:安倍政権はこれでも派遣法を改悪するのか?派遣労働で貧困にあえぐ”普通の女性たち”
http://www.jil.go.jp/press/documents/20150630.pdf


2014年02月10日11時52分
【日本の給与レベルは16年ぶりの低水準、アベノミクスが新たな壁に直面=アメリカのメディアが報道】
 米メディアはこのほど、日本の給与水準が低下し続けているため、給与の引き上げなどを通じてデフレの脱却を目指す「アベノミクス」が新たな壁に直面して いるとの見方を示した。また、多くの中小企業の賃上げが見送られている中、一部の大手企業のベースアップだけで4月の消費税引き上げの悪影響を解消できる かどうか現時点では不明だと指摘した。



(当ブログのコメント)
 アメリカのメディアの予想通り、2014年は、消費税の3%の引き上げを全く解消できずに、2014年度分の(5人以上職場の)実質現金賃金は、 2013年度より3%低下し 2010年の94.9%(1998年の88.3%)に下がった。


日本と中国の名目GDP(ドル換算)
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDPD&c1=CN&c2=JP
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDPD&s=1980&e=2015&c1=JP&c2=US&c3=&c4=&c5=&c6=


2014年11月19日
 海外メディアが相次いでアベノミクスを痛烈批判!タイム誌「消費税よりもアベノミクスそのものが失敗」「日本が景気後退入り」


2014年12月1日
 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは2014年12月1日、日本の長期国債の格付けを「Aa3(ダブルAマイナスに相当)」から「A1(シングルAプラス)」へ1段階引き下げたと発表した。財政赤字削減目標の達成可能性に不確実性が高まったほか、デフレ圧力の下で成長戦略のタイミングと有効性に対する不確実性が高まったと判断した。
(これで、日本国債の格付けは中国国債や韓国国債やサウジアラビア国債よりも低くなった)



2015年4月27日
 米格付け会社フィッチが、日本国債を格下げした。


◆円安で流出する日本の所得
円安の進行は、経済成長の観点からは成長率を押し下げる方向に働く。 
 

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